『心あたたまるお話』

平成12年7月13日


これは私が中学校の頃に、ある雑誌の投書欄で読んでとても感銘を受けたお話です。
今でも忘れられず、そうありたいなと常に思っていますが、
なかなか実行できるチャンスがありません。

ここに、皆さんにご紹介して少しでも
 世の中が明るく楽しいものになればと思い、掲載させて頂きます。
投書されたのはある中年の主婦の方でした。

私は最近、とても感動的な出来事に遭遇しました。
黙っていられなくてこうして投書して、
少しでも皆さんの普段の生活が心豊かなものになれば、と思いペンを取りました。

ある日の午後私は町に買い物に出掛けました。
その帰りのバスの中での出来事です。
私が降りる停留所に近づいたので席から立ち上がって出口に行き、
財布を開けて中からバス代を出そうとしましたら、ちょうど
10円だけ足りません。 困ったわ、どうしようとしていましたら、
後に立っておられた中年の紳士が見かねて
「お困りのようですね、その10円
よろしかったら差し上げますので使ってください。」と私に差し出されました。

後がつかえていたので、
私は素直に10円を受け取り運転手に払いまして
バスを急いで降りました。そして、その紳士に御礼をいいました。

「有難うございました。とても助かりました。あのう
お借りした10円をお返ししたいので、
是非ご住所とお名前をお聞かせくださいませ。」と申しました。
すると紳士は「いいえ、よろしいですよ。困っている時は
お互い様ですよ。結構ですから。」それでも私は気がすまないので、もう
一度強くお願いしました。

すると紳士がこう言われました。
「奥さん、そうですか。それほどまでおっしゃるのなら
私から逆にお願いがあります。聞いていただけるでしょうか。」
「はい、何でもおっしゃる通りに致します。」と私は答えました。

「それでは、今度どこかであなたが困った方を見かけたら、どうか手を差し伸べて
その方を助けてあげてください。約束できますか。」
「はい、約束します。」
「ありがとうございます。あなたがその事をされた時に今日の私へのお返しが
出来たと思ってください。私はそれで十分です。」

私は紳士が立ち去る姿をいつまでも、じっと見つめていました。


                                     紫陽花
                                  e-mail t.shinagawa@do2.enjoy.ne.jp


[添付スケッチ]広島駅前風景
(新井口 やす)